ガラスのコップがテーブルから落ちて、やってしまったと思った次の瞬間には、それまでひとつの完成された形態を維持していたものがバラバラになり、その物質の剛性や地球の重力などに応じて、人間が任意に考えたものではない、それを超えるような自然の物理法則に従ってまた新たな形態やパターンを作り出す。そして私はそれがもう二度と同じ状態に戻ることはないという事実に、郷愁のようなもの、あるいは落としてしまったことに対しての恥ずかしさを感じると同時に、それ自体は美しいと感じる。破壊と因果の観察と自身の手でそれを彫って再現することにより「壊れた完成品」というある種矛盾を内包したものが出来上がる。このシリーズは私にとって認識のドローイングのようなもので、物質とは何か、現象とは何かを探る手がかりになっている。